ギャラリー

ギャラリー間・坂茂展を見て思うこと

2017.07.24
少し前に、ギャラリー間で開催していた「坂 茂:プロジェクツ・イン・プログレス」にいってきました。誤解を恐れずに言いますが、特別意識しているわけではないけれど、時々凄い勢いで胸に入ってくる建築家が僕の中には何人かいます。坂茂氏もそんな建築家の一人です。
特に最近の氏の木造への思いは強いようで、展覧会の内容もそこに重きを置いたもので大変見応えがありました。
昨今、建築界では特に環境問題という観点から木という素材が注目され、その素材の持つ可能性が、特に大型建築において大きく見直されています。それはストラクチャーからマテリアル、建築本体ではない緑化など、多岐に渡ります。中には商業的な匂いがプンプンするような、エセ環境的な観点で木を捉えているような建築も多く見受けられ、その見極めに注意を要するものも少なくありません。
もちろん全てにおいてそんなものが横行しているわけではないのですが、既存の木造を見直す考え方や、S造を木造に置換するような考え方が多く見受けられる中、坂氏にとって木はそれらとは全く異なる視点で捉えられている気がします。木という素材に注目している、というよりは、あらゆる素材についての新たな可能性を模索してる、といった方が正しいのかもしれません。その可能性を模索するベクトルの多様さに驚かされます。そのひとつが木であるというだけなのでしょう。
また、建築そのものだけではなく、建築家としての社会への姿勢などにも感銘させられることは多く、それが新たな建築をつくりだす原動力になっているのだと感じます。この自ら周囲を巻き込んで社会を突き動かしていくパワーに大きな刺激を受けるのです。
ところで、ギャラリー間に行く時に乃木坂駅から出ると必ず目に飛び込んでくる竹山聖氏設計のOXY乃木坂。80年代後半の発表時、同時期に大阪で建てられたD-HOTELと兄弟(姉妹?)のように語られた建築ですが、僕の好きな建築の一つです。時を経て色々と手を入れられて竣工時の禁欲的な表情とは随分と変わってしまい、RC打ち放しはすっかりくすんでしまっていますが、築後30年、寡黙に建ち続けている姿を見ていると、やはりRC造の力強さはいいなぁと思うのです。木造の新たな可能性を感じつつも、RC造には普遍的な歴史に支えられた確度がある。逆に言えば、木造は時代ごとにその扱い方は異なりますが、RC造はオーギュスト・ペレが使い始めた20世紀初頭から大きく変わってはおらず、初めから完成された工法とも言えるわけです。…と話が少し逸れてしまいました。この辺りについて話し出すと長くなりそうなのでまた今度。。