ギャラリー

西山夘三/村野藤吾

2017.07.27
今日は大阪で打ち合わせがあったので、ちょっと早めに出て気になっていた展覧会を覗いてきました。
ひとつはLIXILギャラリー大阪で開催中の「超絶記録!西山夘三のすまい採集帖」。西山夘三というと、食寝分離を提言してその後の住宅計画学において多大な影響を与えたわけですが、そこに至るまでの膨大な調査資料が展示されていました。各地の民家はもちろんのこと、戦後のドヤ(日雇い労働者のための簡易宿舎)やラブホテルの部屋まで、数多くの詳細なスケッチを見ることができました。
部屋を俯瞰するスケッチは妹尾河童が有名ですが、そこは建築学者の西山夘三、スケッチだけでなく細かな寸法も記入されています。実は僕も出張や旅行先のホテルの部屋を実測したりしますが、まぁその場で描きあげるということもあって(というのは言い訳ですが)、俯瞰図ではなく平面図どまりです。いや、反省。。
展示後半では西山氏自身の家族の変遷と共にその時々に応じた住環境の記録も多くあるのですが、ここに住むことへの知恵がたくさん込められています。もし現在家づくりを検討している人がいて、変わっていく家族構成とそれに見合った家のスケールに悩まれている人がいたら、ここは是非見ていただきたい、と思いました。
「住まい」というものは生活を享受するだけのものではなく、「生活」は住まいに対する知恵によっていくらでも豊かになるということを教えてくれます。5人もの子宝に恵まれ、その子達の成長に向き合った西山氏の住環境に対する奮闘ぶりにとてもワクワクさせられました。
食寝分離から発展したnLDK間取りは、家族の多様化により現代ではもはや再考すべき対象となっていますが、西山氏のこの膨大な調査資料を改めて見返していくと、何か新たな思想が見えてくるのではないかという気さえしました。
そして気になっていたもうひとつの展覧会。これはIDEEが村野藤吾の家具を復刻販売するということでその発表展示会でした。正確には次の日からの開催ということでしたが、設営も整っていたため一足先に見てきました。
村野さんの家具は・・・。あ、なんとなく「氏」ではなく「さん」づけです。随分と昔に他界されているのでお会いしたことはないのですが、村野さんの設計した建築は身近に多くあったことからなぜか親近感を感じて村野”さん”とお呼びしています。関西の建築家だけの感覚かもしれませんが・・・。
閑話休題。その村野さんの家具、曲線が独特でとてもいいのです。美しい、とか座りやすい、とかそういう曲線ではない。とにかく”いい”のです。結果としてとても座り心地が良いのですが。
この座り心地も、いわゆるクッションの硬さが、とか寸法的に、とかだけで計ることができない心地良さがあるように感じます。椅子やソファに座る際には意識せずともその姿を見てから座るという行為に移るわけですが、その姿は座る人を受容する優しさを座る前から見せてくれるような気がするのです。
かつて心斎橋プランタンという村野さん設計の喫茶店がありました。椅子やテーブルの家具も村野さんのデザインだったのですが、それが籐を使ったやはり優しい椅子でした。2003年に閉店解体が決まった際に、無理を言ってでもあの椅子を譲ってもらったらよかったと今でも思い返すことがあります。そんな訳で村野さんの家具が復刻されて販売されることはとても嬉しくなりました。